医師の法的義務とは?患者に対して負う主な義務を解説
医師は患者の生命と健康を預かる立場にあり、法律上さまざまな義務を負っています。
義務の内容を正しく理解していないと、意図せず法的トラブルに発展する場面もあります。
本記事では、医師が患者に対して負う主な法的義務の内容と、トラブルを回避するためのポイントについて解説します。
医師が患者に対して負う主な法的義務
医師が患者に対して負う法的義務はおもに以下が考えられます。
応召義務
応召義務とは、正当な事由がなければ患者からの診療の求めを拒んではならないとする義務で、医師の職業倫理の根幹をなす考え方といえます。
厚生労働省の通知では、正当な事由の判断基準が再整理され、緊急性が高い場面では原則として診療に応じる必要があるとされました。
一方、患者の迷惑行為や医療費の不払いが重なった場面では、正当な事由に該当し得るとされています。
違反した場合に直接的な罰則規定はないものの、民事上の損害賠償責任を問われる可能性があります。
インフォームドコンセント
インフォームドコンセントとは、医師が患者に対して病状や治療方針、予想されるリスクを十分に説明し、患者の同意を得たうえで医療行為を行う原則です。
説明が不十分なまま処置を進めた場合、医療行為自体に過失がなくても説明義務違反として損害賠償の対象になり得ます。
守秘義務
守秘義務とは、医師が正当な理由なく業務上知り得た患者の秘密を漏らしてはならないとする義務です。
正当な理由に該当する場面としては、感染症の届出や児童虐待の通告など法令上の報告義務があります。
患者情報を第三者へ提供する際には、原則として患者本人の同意を得る必要があり、同意のないまま情報を共有すると法的責任を追及されかねません。
診療録の記載と保存義務
医師法では、カルテを遅滞なく記載し、5年間保存する義務が定められています。
違反した場合は、50万円以下の罰金に処される可能性があります。
カルテは患者への説明内容や治療経過を記録する書類であり、医療訴訟では重要な証拠として扱われます。
記載内容が不十分だったり、保存期間内に廃棄してしまったりすると訴訟の場面で病院側に不利に働く可能性が高いです。
診断書等の交付義務
病院側の義務として、患者から診断書の交付を求められた場合、正当な事由がなければ拒んではならないというものがあります。
処方箋についても同じ趣旨の規定があり、患者が必要とする書類を適切に交付する義務を医師は負います。
交付を不当に拒否すると患者が保険金の請求や休業補償の申請を行えなくなるなど、具体的な不利益が生じるため損害賠償を請求されるリスクがあります。
善管注意義務
善管注意義務とは、医師が診療にあたって医療水準に即した注意を払わなければならないとされる義務です。
最高裁判例では医薬品の添付文書に記載された用法、用量に従わずに投与した場合、特段の合理的理由がない限り過失が推定されると示されています。
医療水準は、医療機関の規模や地域の特性によって異なり得るものの、基本的な注意義務の水準を下回った診療を行えば法的責任を問われるでしょう。
法的義務違反を防ぐための実務上のポイント
法的義務の違反を防ぐには、日常の診療体制に予防的な仕組みを組み込むことが有効です。
インフォームドコンセントの記録と署名の徹底
インフォームドコンセントの記録は、説明義務違反の指摘を防ぐうえで必要な取り組みです。
説明した病状や治療の選択肢、患者の同意内容をカルテに具体的に記載し同意書にも署名をもらう運用を徹底しましょう。
口頭だけの説明では、訴訟の際に説明を行った事実を立証できないリスクが生じます。
説明の場に看護師を同席させて記録を残す方法も、証拠としての信頼性を高める手段になります。
カルテの正確な時系列記録と修正方法
カルテの記載漏れや不正確な記録は、医療訴訟で医師側の主張を弱める要因です。
診療のたびに所見、検査結果、治療方針を時系列で記録し、修正が必要な場合は修正日と修正理由を併記する形で対応しましょう。
電子カルテを導入している医療機関では、入力テンプレートを活用して記載項目の抜けを防ぐことが大切です。
まとめ
医師が患者に対して負う法的義務は、応召義務やインフォームドコンセント、守秘義務、カルテの記載、保存義務と多岐にわたります。
義務違反は、刑事罰や損害賠償につながりかねず、日常の診療から意識しておく必要があります。 判断に迷う場面や法的リスクへの備えを強化したい場合は、医療法務に精通した弁護士へ早めに相談することをおすすめします。
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